顧客の健全性スコアは、プロダクトへの顧客のエンゲージメントに基づき、顧客の解約の可能性を測る複数の指標をまとめたものです。これは、顧客との関係の健全性を測定できるというメリットがある他、アップセルが見込まれる顧客を判断するうえでも役立ちます。
Pendoは、ユーザーのセンチメントとエンゲージメントを1つの尺度で測定するための顧客の健全性の複合指標として、プロダクトエンゲージメントスコア（PES）を開発しました。PESは、定着率、成長、および粘着性の指標に基づいて計算されます。
また、SalesforceとPendoのインテグレーションにより、Pendoのユーザーエンゲージメント指標の一部をSalesforceにプッシュしたり、幅、深さ、頻度（BDF）フレームワークを使用して顧客の健全性を測定したりすることもできます。
| 指標 | 説明 |
| 幅 | 特定の期間に特定のアカウントでプロダクトを使用した訪問者の数。 |
| 深さ | 主要なリテンション指標として検証対象となっている5～8個の主要機能の使用状況。 |
| 頻度 | 訪問者がプロダクトに費やしている時間と、その訪問者がプロダクトを再訪問する頻度。 |
この記事では、Pendoのデータを使用してSalesforceで独自のBDFスコアを計算する方法の一例を紹介します。ただし、顧客の健全性スコアを計算するための既定の数式はありません。この例に変更を加えて、別の条件を適用することも可能です。
この例には開始点があります。条件を調整する場合は、Salesforceフィールドも同様に調整して、正しいデータと計算結果を取得する必要があります。
前提条件
- Pendo管理者アカウントの権限。
- PendoとSalesforceのインテグレーション。この手順については、Pendo EngageとSalesforceのインテグレーションを設定するを参照してください。
- Salesforce管理者がSalesforceに新しいフィールドを追加できること。
- ベンチマークの発見に役立つスプレッドシート形式のソフトウェア。この記事では、例としてMicrosoft Excelを使用します。
ステップ1. Pendoでアカウントレポートを作成する
Pendoで［ピープル（People）］>［アカウント（Accounts）］>［アカウントレポート（Account Reports）］に移動し、以下のパラメータと列を使用して新しいレポートを作成します。
- セグメントは［全員（Everyone）］に設定します。
- 日付範囲は［過去30日間（Last 30 Days）］に設定します。Salesforceのデータマッピングを設定するためにはこれが重要になります。
- 次の列を追加します。
- ［訪問者（Visitors）］は、幅に使用されます。Pendoのインストール時に設定されるアカウントレベルの訪問者で、2人の人物アイコンで示されます。
- ［アプリ滞在時間（分）（Time on App (minutes)）］は、頻度に使用されます。Pendoのインストール時に設定されるアカウントレベルのメタデータで、2人の人物アイコンで示されます。
- ［フィーチャー（Feature）］は、深さに使用されます。リテンションの指標として検証の対象となる重要な機能を少なくとも1つ選択します。
ビジネスの定義によって主要な機能が異なるため、「深さ」は企業によって変わってきます。通常、パワーユーザーが使用する上位5～8個の機能を選択することをお勧めします。この例では、簡略化のため機能は1つしか挙げませんが、必要に応じて手順を繰り返してください。
どの上位機能を選べばよいかわからない場合は、Pendo機能データを使用して、パワーユーザーや現在の顧客が最も多く使用している機能を確認します。詳細については、フィーチャーのタグ付けと表示を参照してください。
ステップ2. アカウントレポートをエクスポートする
ステップ1で作成したレポートから、ページの右上にあるCSVアイコンを使用してアカウントレポートをエクスポートします。ダウンロードしたCSVファイルの各行は、アカウントIDで示されるアカウントを表します。
ステップ3. スプレッドシートを準備する
Microsoft ExcelまたはGoogleスプレッドシートで2つのタブを作成します。
- 最初のタブに［アカウントレポートデータ（Account Report Data）］という名前を付けます。このタブは、エクスポートしたアカウントレポート（CSVファイル）からコピーするデータに使用されます。
- 2番目のタブに［数式（Formulas）］という名前を付けます。このタブは、最初のタブ（アカウントレポートデータ）に追加したデータに基づいてベンチマークを自動計算するために使用されます。
アカウントレポートデータタブ
［訪問者数（Number of Visitors）］、［アプリ滞在時間（Time on App）］、［主要機能の使用率（Key Feature Usage）］の各指標の列を作成します。複数の機能を分析する場合は、機能ごとに列を作成します。列に追加したデータは、次に作成する［数式］タブで使用します。
数式タブ
最初のタブ（アカウントレポートデータ）に追加したデータに基づいて、ベンチマークを自動計算するために数式タブを設定します。
「危険」（0点）、「要注意」（1点）、「健全」（2点）、「チャンピオン」（3点） の使用状況に紐づいた4点制の評価システムを使用し、パーセンタイル関数で幅、深さ、頻度を計算します。パーセンタイルを活用すると、4つのセグメントにわたる均等な分布を特定できます。
- 25% = 危険
- 50% = 要注意
- 75% = 健全
- 100％ ＝ チャンピオン
25、50、75のパーセンタイルを使用して、各カテゴリーの使用状況ラインをどこに引くべきかを推定できます。
この評価システムを作成し、25%、50%、75%のベンチマークを自動計算するには、指標ごとにテーブルを作成します。各指標はスプレッドシートの［アカウントレポートデータ］タブの［訪問者数］、［アプリ滞在時間］、［主要機能の使用率］の列に対応しています。
- 各テーブルの1列目の1行目に［危険（Red）］、2行目に［要注意（At risk）］、3行目に［健全（Healthy）］、4行目に［チャンピオン（Champion）］を追加します。
- 各テーブルの2列目の1行目に［25%］、2行目に［50%］、3行目に［75%］、4行目に［100%］の階層を追加します。
- 3列目は空白のままにします。この列は、次のステップでベンチマークを計算するために使用します。
- 各テーブルの4列目の1行目に［0］、2行目に［1］、3行目に［2］、4行目に［3］を入力し、各パーセンタイルの隣に点数制を追加します。
ステップ4. ベンチマークを計算する
まず、エクスポートしたアカウントレポートから、スプレッドシートの最初のタブ（アカウントレポートデータ）の適切な列にデータをコピーします。
次に、スプレッドシートの2番目のタブ（数式）の各テーブルに計算結果を入力します。これを行うには、各テーブルの3列目に適切なパーセンタイル関数を追加します。数式内の最初のタブの名前は、大文字と小文字の区別やスペースも含めて完全に一致している必要があることにご注意ください。この場合、タブの正確な名前は［アカウントレポートデータ］で、数式内の両側がアポストロフィ（'）で囲まれています。
たとえば、［訪問者数］テーブルの数式は次のようになります。
- 1行目（危険、25%）の場合、
=PERCENTILE.EXC('Account Report Data'!A:A,0.25) - 2行目（要注意、50%）の場合、
=PERCENTILE.EXC('Account Report Data'!A:A,0.5) - 3行目（健全性、75%）の場合、
=PERCENTILE.EXC('Account Report Data'!A:A,0.75)
100％ベンチマークは、75％ベンチマークを上回る任意の値であるため、4行目（チャンピオン、100％）に計算式はありません。手動で100パーセンタイルに数字を加えることはできます。たとえば、75%のベンチマークが2.5の場合、100%のベンチマークとして「>2.5」を追加できます。
スプレッドシートの［アカウントレポートデータ］タブで、テーブルごとにA:Aを各列を表す適切な文字に入れ替えます。たとえば、［アプリ滞在時間］のデータがB列にある場合、数式を=PERCENTILE.EXC('Account Report Data'!B:B,...)に変更します。
ステップ5. Salesforceフィールドを作成する
Pendoのデータを取得し、スコアを計算するためのSalesforceフィールドを作成します。
注：API名には「Pendo_」を入れる必要があります。PendoとSalesforceのインテグレーションでは、「Pendo」で始まるSalesforceのカスタムフィールドにのみ書き込みを行います。
お客様のSalesforceアカウントに移動し、Pendoからデータを取得するフィールドとスコアを計算するフィールドを作成します。この例では、少なくとも7つのフィールドを設定する必要があります。
-
- 数値フィールド名：
訪問者数（Number of Visitors）、API名：Pendo_Number_of_Visitors - 数値フィールド名：
フィーチャー名（Feature Name）、API名：Pendo_Feature_Name - 数値フィールド名：
アプリ内滞在時間（Time in App）、API名：Pendo_Time_in_App
- 数値フィールド名：
次に、Salesforceで数式フィールドを作成してスコアを計算します。「#」をステップ2で特定したベンチマークに置き換え、上記で作成したフィールドに収集したPendoのデータを使用します。詳細については、Salesforceの記事：数式フィールドを作成するを参照してください。
BDF Visitorsという「幅」のスコアを計算するフィールド（フィールドタイプ＝カスタム数式フィールド、数値タイプ、小数点以下なし）を作成します。以下のコードをコピーして、#をステップ2で特定したベンチマークに置き換えます。
IF(Pendo_Number_of_Visitors__c > # , 3, IF(Pendo_Number_of_Visitors__c > # , 2, IF(Pendo_Number_of_Visitors__c > # , 1 , 0 ) ) )BDF Feature Nameという「深さ」のスコアを計算するフィールド（フィールドタイプ＝カスタム数式フィールド、数値タイプ、小数点以下なし）を作成します。以下のコードをコピーして、#をステップ2で特定したベンチマークに置き換えます。
IF(Pendo_Feature_Name__c > # , 3, IF(Pendo_Feature_Name__c > # , 2, IF(Pendo_Feature_Name__c > # , 1 , 0 ) ) )BDF Timeという「頻度」のスコアを計算するフィールド（フィールドタイプ＝カスタム数式フィールド、数値タイプ、小数点以下なし）を作成します。以下のコードをコピーして、#をステップ2で特定したベンチマークに置き換えます。
IF(Pendo_Time_in_App__c > # , 3, IF(Pendo_Time_in_App__c > # , 2, IF(Pendo_Time_in_App__c > # , 1 , 0 ) ) )Total Score（フィールドタイプ＝カスタム数式フィールド、数値タイプ、小数点以下なし）。以下のコードをコピーします。
BDF_Visitors__c + BDF_Feature__c + BDF_Timeステップ6. Salesforceにプッシュするレポートを設定する
保存したアカウントレポートで、以下の手順を実施します。
- ［Salesforceへのプッシュ（Salesforce Push）］行で［設定（Set Up）］を選択し、Salesforceフィールドのマッピングを開始します。
- 新しく作成したSalesforceフィールドをマッピングし、設定を保存します。
- 1度テストを行うため、アカウントレポートで［今すぐ同期（Sync Now）］を選択し、変更内容を手動でSalesforceにプッシュします。その後は、24時間ごとにデータ同期が自動で実施されます。同期が完了したら、Salesforceでデータを確認します。